都城に“いこい”の場をつくりたい。ブレない旗印が導いた、未来を乗せた船の軌跡。

霧島酒造・スターバックスともに前例のない初めての挑戦。
『KIRISHIMA GREENSHIP icoia』一大プロジェクトの裏側に迫る。

霧島酒造の本社増設工場横にある噴水は、長年にわたり霧島酒造の歩みを見守ってきたシンボルのひとつだ。
その噴水のほど近くに、2026年1月、新たな施設が誕生した。その名は『KIRISHIMA GREENSHIP icoia(キリシマ グリーンシップ イコイア)』。
霧島酒造とスターバックスのコラボレーションプロジェクトから誕生した施設である。
施設には、スターバックスの店舗のほか、霧島酒造の直営店舗、また植物園や屋上庭園まで併設されており、「都城の“いこい”の場」としてついにオープンを迎えた。
焼酎とコーヒー。一見、共通点の薄いように見える二社が、どのように共鳴し、どのようにこの空間を創り上げてきたのか。

二社の出会いは2017年。スターバックスが社内研修の一環として霧島酒造を訪問したことがきっかけだ。
その後も交流を続けていくなかで、二社だからこそできるコラボレーションがあるのではと話は膨らんでいった。
「二社共にまっさらな状態から、オープン後の活動まで見据えて共創するのは初めてのこと。不安がなかったといえば嘘になります」
そう当時を振り返るのは、本プロジェクトのために新設されたNSプロダクト課の井手政哉。
井手は、以前も別の施設の立ち上げに携わった経験を持つ。また、自宅に焙煎機を持つほど無類のコーヒー好きということもあり、チームのキーパーソンとして抜擢された。

二社がまず行ったのは、改めてお互いの理解を深めること。何を大切にし、どのような事業、活動を行っているのかなど相互理解に努めた。
はじめは、チームの温度感を掴むのに苦労をしたと語る井手。
「私たち自身、最初は『世界で活躍されているスターバックスさん』として、良くも悪くも遠い存在に感じてしまっていた部分がありました。しかし、このプロジェクトを成功させるには、同じ目線、同じ意識で向き合う必要がある。そのために多くの時間を費やしました」

初めての懇親会で、井手はスターバックスのパートナー(社員)の前で、スターバックスの豆を使ったエスプレッソを作り、それを黒霧島の原酒と混ぜ、オリジナルのコラボカクテルを披露したという。
「プロの方々の前でコーヒーを淹れるのは緊張しましたが、感動してもらえてうれしかったです。企業と企業のコラボといっても、結局は人と人だと思います。自分をさらけ出したことで、距離を縮められたかなと感じています」
その言葉通り、井手はどんな場面でも目の前の相手に自分たちの想いを届ける努力を怠らなかった。

会話を重ねる中で、二社の想いを体現した施設を建設するのはどうかという案が挙がる。
そこからは施設の構想に向けて、意見交換を活発に行った。テーマは『都城をより良くするためには』。
「話をする中で、スターバックスさんは全国の出店先で『地域の人たちにとって最適な店舗の形とはなにか』を模索されていることを知りました。その地域への想いは、霧島酒造がずっと大切にしてきたことと通じるものがあったんです」
お互いの根底にある価値観を共有できたことで、目線はぐっと近くなった。
「企業のPRのためにやるのではない。地域のためにこの施設にお互いのどんな長所を持ち寄れるか。プロジェクトは、そういった視点を大切に進行していきました」
2022年に本格的に始動し、2024年に着工するまでのおよそ2年もの期間を対話に費やした。
そうして出たキーワードが『自然環境』と『地域社会』の2つだ。

「地域の人が、自然の恵みの循環と、人と人とのつながりを体験できる“いこい”の場を大きなテーマとして、お互いが大切にしている想いや、お客様に体験いただきたいことを詰め込みました」
そう語る井手の目は、創り上げてきたものへの自信に満ちていた。

建築は国立競技場などを手掛けた隈研吾氏に依頼。
「隈研吾さんは、その土地の環境、文化に溶け込む建築を大切にされている方。本施設が目指すものとも合っていると感じ、依頼しました」
自然と調和した施設設計に、亜熱帯植物を見ながら非日常を味わえる植物園。霧島山と沖水川を一望できる屋上庭園や、開放的な芝生エリアが設けられ、憩いの空間が完成した。

スターバックス コーヒー ジャパン の担当者である柳和宏氏にも話を聞いた。
「ディスカッションを重ねるなかで、霧島酒造の皆さんの人柄や焼酎への情熱、焼酎が人をつなぐ力を本当に大切にされていることがひしひしと伝わってきました。これらは私たちのコーヒーへの情熱と通じるものがあり、強いカルチャーフィットを感じました。前例のない取り組みだったからこそ、試行錯誤を重ねながら、プロジェクトがまだ柔らかい段階から積極的に想いを共有し合い、少しずつ具体化していくプロセスが続きました」
時には意見が食い違うことがあっても、一緒に時間をかけてめざすべき姿を作っていけたことは、両社の情熱とお互いへのリスペクトがあってこそ実現できたことだと柳氏は振り返った。

スターバックス コーヒー ジャパン 柳 和宏氏

「オープンして終わりではなく、むしろここからが大変かもしれませんね」と、嬉しい悲鳴を上げる井手。
今後は、施設を利用したワークショップなど、新たなコラボレーションの取り組みもすでに考えているという。
「現在動いているのが、『たい肥クラブ』の活動。廃棄物である焼酎かすとコーヒーかすを、たい肥として新たな価値に生まれ変わらせるプロジェクトで、配分や材料など、スターバックスさんや地元の南九州大学の皆さんとともに試行錯誤しました。本当にたい肥になったときは感動しましたね」と笑顔で語る。
たい肥クラブは今後も地域全体を巻き込んで活動を広げていく予定だ。

建物の形状や環境にやさしいサツマイモ発電のエネルギーを受けて、未来に向かって前進する船をイメージして名付けられた『KIRISHIMA GREENSHIP icoia』。
多くの人と想いを乗せた船は、2026年1月27日、ついに船出を迎えた。
本来まざり合うことのなかった二社が、根底にある想いの部分で共鳴したことで生まれたこの船が、これから先、どのような出会いを紡ぎ、どれだけの“いこい”の時間を生み出せるのか。
その航海は、すでに始まっている。

■KIRISHIMA GREENSHIP icoiaサイトはこちら

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